自由貿易と保護貿易の巻

こんにちは! ひでです。
日本とEUの間でEPA(経済連携協定)が締結されました。
安倍総理とEU首脳が署名を行った」という記事が大きく掲載されています。
後はそれぞれの議会での承認手続きを行って、来年の発効を目指す!という流れですね。

「経済を盛り上げるためには自由貿易が重要」っていうのはわかるけど、トランプ大統領はTPPから離脱するなど保護貿易的な政策を行おうとしてるし……
それぞれの国にそれぞれの思惑がありそうで、経済問題だけにとどまらない奥の深さが感じられますね。
これを政治や歴史の観点から見てみるとどうなんだろう?
というわけで、自由貿易保護貿易のあれこれ調べちゃいました!

自由貿易保護貿易ってどんなの?

自国にたりないものは外国からの輸入に頼るしかないけど、やはり大事なのは国内の産業。
これがどの国にも共通の考え方です。
海外から入ってきた製品は少し値段を高めに設定して、なるべく国内で作られたものが売れるようにします。
そのために外国からの輸入品には、通常「関税」がかけられます。

自由貿易というのはこの関税を低く設定、または完全になくしてしまって、海外から入ってきた製品を制限なく自由に流通させましょう! というものです。
安い商品が増えてたくさんモノが売れるようになって景気がよくなる、というメリットがある反面、国産の製品が競争に負けて衰退する可能性があるというデメリットもあります。

自由貿易の反対は保護貿易
関税を引き上げて外国からの製品の値段を高く設定、売れにくくする政策です。
こちらのメリットは国内産業が保護されること。
デメリットは自由な値下げ競争が期待できなくなることです。 

自由貿易保護貿易の対立が戦争の原因?

第二次世界大戦が起こった原因の一つが「保護貿易が行き過ぎたこと」と言われています。
1929年アメリカのウォール街で起こった株の大暴落は「大恐慌」を引き起こしました。
持ってる株の価値が暴落したということは、今まで持ってたお金を失ったのと同じこと。
そりゃあモノは売れなくなるし多くの会社が立ち行かなくなるし失業者は街にあふれて……
経済は大混乱しました。
そんな時「うちはうちだけでやっていけるから、外国からの製品は入れない方がいいもんね。
国内の産業や会社を守っていれば、うちだけは安泰だもんね」と考える国が出てきたのです。
その代表がイギリス、アメリカ、ソ連でした。

イギリスは国土は小さいけど、世界中に植民地があり「太陽が沈まない国」と呼ばれたほど。
原料調達も作った製品を売る市場にもまったく困らなかったのです。
自国と植民地を合わせた地域の中だけで取引がなされる「ブロック経済」を推し進めました。

アメリカは第一次世界大戦での勝ち組。
戦場となってヘトヘトに疲弊していたヨーロッパに代わって「世界の工場」となったアメリカは、製品を世界中へ輸出し外貨を獲得することができました。
問題は原料の調達ですけど、国内に豊富な資源を持ち食糧も自給できるので保護貿易政策を取ることができたのです。

ソ連大恐慌が始まった時点ですでに社会主義国家となっていました。
国内に大きな経済圏を持ち、政府の計画通りに生産を進める「五か年計画」を進めていて、基本的には大恐慌の影響を受けなかったと言われています。

これに対して「外国との取引きができないと困ります!」という国もありました。
ドイツ、イタリア、そして日本がその代表でした。

ドイツとイタリアはヨーロッパの大国の中では後発組。
国内にそれぞれの領土を持つ「諸侯」がたくさんいて、それぞれが力を持ち、それぞれが「ここはオレの領土だ!」と主張し譲らなかったのです。
一つの国としてのまとまりができたのは19世紀も後半になってから。
その後世界は保護貿易ブロック経済の傾向が強まります。
大国として生き残るのに必要な石油や鉄などの物資や市場を確保するために、ドイツとイタリアはアフリカやアジアの土地や利権を取りに行くようになったのです。(裏面へ続く)
日本が近代化に成功したのは19世紀後半。
「ヨーロッパが500年かかったことを日本は40年で成し遂げた」と言われました。
そんな日本をひどく嫌っていたのがアメリカのフランクリン・ローズベルト大統領。
格下と思ってたアジアの国が、まさに日の出の勢いで世界の舞台に躍り出たのが気に入らなかったのです。
日本は大東亜共栄圏という東アジアのブロック経済圏を構築しようとしました。
中国の利権を手に入れたいローズベルト大統領はそれを阻止しようとします。
そして打ち出した策が「ABCD包囲網」。
A……アメリカ(America)
B……イギリス(Briten)
C……中国(China)
D……オランダ(Dutch)
この四か国が一致して日本への石油の供給を遮断する、というものでした。

日本はアジアの中では石油の豊富なインドネシアへ進出。
そこを植民地としていたオランダと戦うことになりました。
こうして日本の軍国主義は勢いを増し、最終的には世界中を相手に戦争をすることに。
その結果は……二度と繰り返してはならない悲惨なものになってしまいました。

植民地を持つ国と持たざる国。
他国と貿易しなくてもやっていける国とやっていけない国。
これらのギャップの拡大、国どうしの利害のぶつかり合い。
これこそが人類が悲惨な世界大戦を経験することになった原因です。
この反省を踏まえて戦後設立されたのがGATT(関税と貿易に関する一般協定)です。
世界の国々の自由な貿易を推進することで、世界平和を実現しようとしたのです。
それを進めて国際機関として設立されたのがWTO世界貿易機関)。
加盟国は現在164か国です。

WTO世界貿易機関)に主導されるまでもなく、国と国とで自主的に自由貿易を進めようとする動きも出てきました。
それがFTA(自由貿易協定)です。
それをさらにすすめたものが、今回日欧で署名されたEPA(経済連携協定)です。
モノの動きだけでなく、人の移動、知的財産権の保護、投資などいろんな協力や連携で、お
互いの国の関係強化を目指すための協定です。

輸入品に高い関税をかけようとするトランプ大統領
アメリカファースト! アメリカがよければそれでいい!」
とする保護貿易的な政策は世界平和に対する脅威だ、という声も聞かれます。
それに対抗するようにEPA(経済連携協定)を推進する日欧。
ロシアや中国は今後どう出るのでしょうか?
自由貿易保護貿易の対立の歴史を知っておくと、各国の思惑が理解できそうですね。
日欧EPA関連の記事は今後も大注目株です。
明日の朝刊が待ち遠しい!